今週の語用論のクラスは日本語の呼称および人称代名詞がトピックでした。日本語では2人称の「あなた」を誰にでも使えるわけではない、とかそういう話題です。知らない人に対してどう呼びかけるか、というのは私の大好きなトピックですが、シンガポールは8割が中国系なので、英語と中国語の呼称の問題が入り混じってなかなかおもしろいんです。中国語は日本語以上に親族呼称を他人との人間関係にも延長させるのが特徴です。

シンガポールで名前を知らない女の人に対する呼称はAunty(おばさん)と小姐(シャオヂエ、おねえさん)があります。そこでシンガポール人の学生に、授業の最後に食堂に行って、どの人はAuntyと呼ぶか、どの人は小姐と呼ぶか、一人一人判断してもらいました。男性に対してはUncle(おじさん)が一般に使えますが、私くらいの年代の女性が若いお兄さんに対して呼びかけるときは別の呼称があり、おじさんにおまけしてもらいたいときは「ボス」という意味のラオパンという呼称も使われるそうです。今週マーケットに行ったらさっそく使ってみようと思います。

女性の呼称に戻りますが、私ぐらいの年代の女性は微妙な線にあるといえます。若い学生は残酷ですから、例を挙げさせるとあの先生はAunty,あの先生は小姐、あの先生はちゃんとお化粧して、おしゃれな格好をしてる日は小姐、そうでなければAunty、とか、シビアに判断をくだしていることがわかりました。そしてがんばっていれば歳をとってもAuntyにならず、小姐であることも可能だということです。またクラスが上とみなされる外国人の場合はこの限りではありません。日本人のようにどうも西洋人コンプレックスがあって、それが反映されています。Auntyの特徴は髪はパーマをかけている、大声で話す、服装は楽な格好、プラスチックの買い物袋をさげている、など、まさに日本の「おばさん」の定義と重なりますが、日本で知らない女性に「おばさん」と言ったら失礼になる場合でも、シンガポールで「Aunty」と呼びかけるのは失礼というわけではありません。それは日本語の「おばさん」がほとんど年齢によってカテゴリー化されているのに対し、中国語のそれは親族呼称の延長だからです。とは言ってもやはりなんとか道端でAuntyとは呼ばれないようにがんばりたいものです。