ヘルシンキから電車で2時間ほど行くとテンペレという街がある。両側を湖に挟まれたこの街にはBiosemioticsの学会で知り合ってもう5年になる友達、通称スナフキンがいる。ヘルシンキまで来ると行ったらテンペレにおいでというので行ってきた。

さあ、何はともあれまずお昼だ。ローカルな食べ物を食べたいといったらスナフキンは駅の近くの広場に連れて行ってくれた。

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いろいろ屋台がならんで食べ物を売っている。


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この辺の湖でとれるムイクという小魚、それにいわしの揚げたのに自分の好きなじゃがいもとサラダをつけてくれる。ソースはガーリック風味かディル風味のマヨネーズ。トナカイの肉入りスープはクリーム味。ヨーロッパはどこでもじゃがいもがとってもおいしい。トマトはスペインから来てるらしいがこれもちゃんとトマトの味がする(アメリカもシンガポールもトマトはもう全然トマトの味がしないので食べるのが無駄なような気がしてきている)。

こういうところで食べるのは実に楽しい。屋台のおばちゃんは、シンガポールから来たこの客人が料理をどう思ったかスナフキンに聞いたらしい。からっぽになったお皿を見せたらとてもうれしそうだった。


実はこの街で私が一番見たかったものはムーミン博物館なのだ。そのことはスナフキンにも前々から言っておいたので、ぶらぶらと散歩がてら街の中心地に向かう。ムーミン博物館は図書館の地下にある。

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ムーミンは日本のアニメではお子様向けだが、原作はとってもシュールで奥が深く、トーべ・ヤンセンはきのこでも食べて幻覚を見ていたんじゃないかと思わせるほどところどころぶっ飛んでいる。キャラクターも日本のアニメのようにわかりやすくいい人悪い人ではなく、ノンノン(原作の訳ではスノークのお嬢さん)はちょっとばかだったりするし、ムーミンパパなんかはとんでもない思いつきで家族を無謀な意味のない環境においたりして無責任きわまりない(このことをテンペレのスナフキンに言うと、それは典型的なこの国の父親像なんだそうだ)。ただしスナフキンだけは原作でも世捨て人のような賢者でかっこいいし、ムーミンは心から慕っている。ムーミンママの本当の良さは原作を読まないとわからないはずだ。だからムーミンはすべての本を原作をぜひ読んでいただきたい。

博物館はトーべ・ヤンセンの妹だかがムーミンをコミックにしたものの原画などが数多く展示され、本の挿絵の芸術性の高さも大人が十分堪能できる。登場人物の名前も言語によって訳し方がだいぶちがっておもしろかった。ちなみにトーべ・ヤンセンは原作をスウェーデン語で書いている。

博物館の後もスナフキンはこの小さな街を一日中車で案内してくれた。小さな街だがスナフキンはこの街はちょうどいい大きさだという。東京とニューヨーク出身の私たちにとってはつまらなくないのかと思うところだが、昔の古い工場や、小高い丘の小さい塔や、湖に挟まれて街で一番狭くなっている地域などを楽しそうに案内してくれるスナフキンがうらやましくもあった。

スナフキンとDonちゃんはこの日特にBiosemioticsについては何も話さなかった。学会ではお互いに認め合わず、バシバシ批判するし、5年たっても歩み寄る気配もないが、外では気さくな友達というのは全く素敵だ。Biosemioticsの人たちはこういう人が本当に多い。スナフキンには夕食まで付き合ってもらった。バイキングをテーマにしたレストランだったがなかなかおいしかった。

最後に特筆すべきなのは、フィンランドの列車のすばらしさ。自転車置き場、車椅子でも利用可能なトイレから、グループ用個室、アレルギー患者用のコンパートメントもあり、自前のヘッドフォンを接続すれば音楽も聴ける。こんな列車でフィンランドのずーっと北の方に行ったらさぞかし楽しいだろう。